ライターという職業(その1)
ライターは、出版社や広告制作会社ほか、企業や個人から文筆の依頼を受け、依頼内容に基づいた文章を納品することで対価を得る職業です。
文章を書く仕事なら、国語教師や日本語教師(外国人に日本語を教える教師)にもできるのでは? そんな疑問も生まれてくるかと思います。
国語や日本語教師は、プロのライターよりも漢字や熟語の知識が豊富で、正しい日本語文法を心得ていると思います。だからといって、プロのライターとして務まるわけではありません。
正しい日本語を書いてほしいのであれば国語教師に文章を依頼するのが賢明かも知れません。しかし、お金を払って正しい日本語を書いてほしいというニーズがどれくらいあるでしょうか? 出版社は、編集者の意向を汲み取り、読者の興味をそそる文章をライターに求め、広告制作会社は消費者にインパクトを与え、訴求できるコピーを期待しライターに文章を依頼します。それは企業も個人も同じです。
たとえば欧米人に「お好み焼き」という、日本独自の料理を説明する際、お好み焼きの材料や作り方、見た目、味、起源や食文化などのうん蓄を語る前に、「Japanese pizza(日本風のピザ)」という発想ができ表現できるのがプロのライターで、お客様(文章の依頼者)はその発想にお金を払うのです。
ライターの仕事はある意味「翻訳」です。「婦人科医師→主婦」、「国際政治学者→小学生」、「ビジネスコンサルタント→新社会人」など、専門家の小難しい話を編集者やCD(クリエティブ・ディレクター)の指示に基づいて、ターゲットである層に対して関心を持ってもらうように面白おかしく、分かりやすい文章に仕上げるのがプロのライターの仕事。
もちろん日本語の語彙や正しい文法をより多く知っているに越したことはありませんが、それよりも一般常識と幅広い知識、人間の普遍性を理解し人の心理を読む力、小難しい・ややこしい内容を端的に言い換えられる力のほうが断然重要なのです。
人によっては、本によっては、ライターになるためには、たくさん書くことが大事だと教えていますが、僕は決してそうは思いません。それは上記の理由からです。上記を心得ず、たくさんの文章を書いたところで正しい日本語の文章は書けても、読者や消費者の興味をそそる文章は書けないと考えるのです。