ライターの著作権に対する個人的見解
前回「ライターが書いた記事の著作権の行方」というタイトルでブログを書き、依頼者に納品した記事が著作権侵害された際、どうすればいいか、法的な手続きをするだけの価値があるか、さらに著作権侵害をされないための防御策などについて述べました。
【関連ブログ】
ライターが書いた記事の著作権の行方
https://www.writer.co.jp/ライターが書いた記事の著作権の行方/
著作権法により、著作物を創作した時点で、著作者に著作権および著作人格権が自動的に発生します。著作権とは「著作者が自己の著作物を独占的に支配して利益を受ける権利」で、著作人格権とは「著作物に対して意に反する改変などを受けない権利」のことです。取材・執筆の依頼者からライターが発注を受けて、ライターが作成した記事もライターの著作物で、その記事の著作権はライターにあります。しかし依頼者は記事を自由に使いたいので、著作権の譲渡を求める契約書を事前に交わすところも少なくありません。契約書を交わさず、記事完成後に揉めるケースもあると述べました。
筆者にこだわる記事、こだわらない記事
記事を依頼する側にとって、こちらの意図と内容をうまくまとめてくれるのあればライターは誰でもいいというパターンと、この記事はこの人(こういう人)に書いてほしいと筆者に重点を置くパターンがあります。前者は依頼者が記事に関する情報を管理しているケースで、後者は依頼者が記事に関する情報を持っておらず筆者に委ねるケースです。なので前者は筆者が誰であろうとうまくまとめてくれれば誰でもいいですし、後者は専門家や、著名人や影響力のある人が求められ、筆者が前面に出ることが多く、依頼者にとっては“筆者のふんどしで相撲を取る”といったところです。
前者の場合、記事のテーマ、展開、落としどころなど、依頼者が青写真を描いていて細かな指示が依頼者から出ることが多く、ライターはその指示に基づき取材や執筆をして、記事を完成させます。実際に記事を作成するのはライターですが、この記事作成の主体性は依頼者にあるといえます。このようなやり方で作成した記事の著作権をライターが主張したり、著作人格権を行使したり、ライターに執筆費用を支払っている依頼者が記事に一切手を加えられないというのは常識的に考えておかしいように思えてなりせん。
ライターの執筆依頼の多くは前者のケースで、弊社で請け負い、ライターさんに依頼するケースも然りで、依頼者の意図する内容に、取材して執筆するので、主体性は依頼者側にあります。私は13年余りライターの手配サービスを展開していますが、ライターさんから著作権の侵害を訴えられた記憶はありません。それでは、なぜこのようなことを今ブログに記すのか?
過剰な権利主張は業界を縮小させる
個人の権利を訴え、それを尊重する最近の風潮を危惧してのことです。それはそれで決して悪いことではなく、いろいろな方面で虐げられている人々にとって、こんな希望の追い風はありません。憲法で、法律で謳われているからといって、何でもかんでも権利を盾に秩序を壊すようなことはしてもらいたくないと思うのです。上記したケースで、ライターが依頼を受けて執筆したすべての記事に著作権と著作人格権を主張することがスタンダードになれば、ライターの仕事がゼロにはならないにしても、多くの仕事案件が消滅すると考えます。
この写真は、以前「宣伝名人」というプレスリリース配信・掲載サイトを弊社が運営していたときに、それを見たある制作会社の方から、クライアント企業の広報誌に「プレスリリースの基本」というテーマで寄稿してほしいと依頼を受け、私が対応した誌面の一部です。見開きの誌面構成と執筆を私自身がして納品し、そのまま掲載されました。この誌面、記事は私の主体性が発揮されたもので、上記した後者のパターンで著作権を主張するに値すと私は考えます。
しかし私は著作権を主張しませんでした。今ほど著作権に関心がありませんでしたし、どんどん二次使用していただければ、弊社、私の広報(PR)になるという思いがあったからです。しかし、納品した内容を一部削除や修正、または大幅な再編集をして、私の伝えたい内容やニュアンスが変わってしまっている、そんな記事を見つけたら、著作人格権を主張し、使用禁止を求めるかも知れません。記名で書いている以上、こちらの意図としない内容に変更されたなら、それはとても心外だからです。
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