ライターの費用~その2~
以前に「ライターの費用」というタイトルの記事で、ライターによって費用はまちまちなので、弊社のコーディネートサービスの費用も各案件の内容もさることながら、コーディネートするライターによって幅があると述べました。今回は、ライターは依頼者と対等にやり取りできているか? 適正な費用を依頼者から受け取っているか? というテーマで記事を書いてみます。
【関連ブログ】
https://www.writer.co.jp/ライターの費用/
制作時間、30年+30秒の作品
ライターやカメラマン、デザイナーなどクリエイターと呼ばれる人たちの費用を算出する際に、よく語られるのが20世紀を代表する画家、パブロ・ピカソの逸話です。
ある日、道行くファンの女性から声をかけられ、「何か絵を描いてちょうだいよ」と紙とペンを渡され、ピカソは30秒ほどで絵を描き、「この絵は100万ドルやで」と女性に渡します。女性は、「何でやねん‼ たった30秒で描いた絵ですやん?」と返すと、ピカソは「30年と30秒で描いた絵やんけー」と放った、そんな内容のエピソードです。
これが実話かどうかは分かりませんが、その絵はそれだけの価値があり、ピカソがピカソとして認められるために30年という熟成期間を要し、その最高に熟成した唯一無二の画家が描いた作品であることを如実に説明しており、プロとして絵を描いたことのない美大生が描いた30秒の絵とは明らかに違うことを示しています。
ライターに依頼するのは仕事? それとも作業?
最近立て続けに、新規客に見積りを出した時点で、先方との連絡が途切れることがありました。要するに、費用が思いのほか高く交渉の余地もないのでしょう。決して弊社が荒唐無稽な高額見積りを提示している訳ではありません。
見積額が高いと連絡が途切れるところのほとんどは、ライターに依頼したことがない企業や個人です。ライター活動経験のないアルバイトを何人か雇ってライティング業務をしているところから、ライターを手配してほしいと相談を受け、先方に出向き詳細を聞いたうえで見積りを出したのですが、「思っていたより高いです」とメールがあったきり、連絡がつかなくなったことがあります。アルバイトと同じ感覚でライターの取材や執筆を時給計算して、弊社の手数料を少しプラスαした程度くらいを考えていたのかも知れません。それでは弊社でなくとも、ライター個人とやり取りしても金銭的に難しいと思います。
ピカソほどの偉人のエピソードを例に出すのはおこがましいですが、ライターの仕事を時給計算の“作業”と捉えられるのはとても悔しく悲しいです。しかしそれが世間の認識であり要望です。事務的に情報をまとめる‟作業”なら時給のアルバイトでいいと思いますが、読者に何らかの影響を与える文面を望む‟仕事”を期待するなら、その価値を費用に考慮してもらう必要があります。ライティングに関わらず、アルバイトに作業を依頼する感覚でプロに依頼するのはおかしいですし、プロの仕事をアルバイトの作業費用でまかなおうとするのは、余りにも依頼者本位です。
【関連ブログ】
作業と仕事
https://www.writer.co.jp/作業と仕事/
理想を語れない情けなさ
私は長年、初めてライターに取材・執筆を依頼したいと望む人たちと交渉して来ました。いいものを作りたいという方とは費用の調整を強いられながらも受注に至るのですが、ライターに頼みたいが費用を抑えたいという気持ちが「いいものを作りたい」という気持ちを上回る人は、見積額を提示した時点で連絡が途切れ、連絡をしても無視されることもあります。事務的なやり取りにならないよう、「費用が合わなかったときは、やれる範囲で調整するので、遠慮なくおしゃってください」と費用交渉の余地を十分に伝えているにも関わらずです。
このような人たちは一部ではなく、潜在的なライターのニーズでいうと大半がそんな人たちだといえます。弊社がターゲットにする層ではないと見過ごすのは簡単ですが、それではライターの市場が広がりません。かと言って、先方の言い値で受注すれば、「ライターとはそれほどの価値のもの」と認識させることになり、業界をおとしめる罪な行為にもなります。弊社としては、諦めず交渉し続け、利益がほとんどなくてもとにかく受注し、仕事でライターの価値、弊社の仕事ぶりを実感してもらうことが会社の姿勢として理想ですが、その一度の依頼だけでその後の継続的な取引きに繋がらないことをこれまで何度も経験しているので、情けないですが、男前な理想を公言する勇気がありません。
「ライターの価値を伝える」とまでは言えませんが、「ライターの価値判断をしてもらう」ために、ライターやライティングに関して、このブログを書き続けていきます。
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