ライターという職業(その3)
出版業界には「急な仕事は忙しい人に頼め」という鉄則があります。
締め切りが絶対の出版業界にあって、忙しいライターほど締め切りをキッチリ守ると同時にある程度クオリティのある原稿を上げてくれます。忙しいということは、仕事依頼が多いということ。締め切りを守らなかったり、クオリティの低い原稿を書いたりしていては、仕事の依頼は来ません。忙しい人ほど、確実に仕事をこなしてくれるのです。
確かにこれは一理あります。しかし忙しい人へ頼めば、100%満足の行く仕事をしてくれるかというと、そうでもありません。ライターの仕事に限らず、何ごとにも「相性」というものがあるのです。
とても忙しく、仕事ができると評判のライターに仕事を頼んで、仕事の姿勢や原稿の出来が(僕として)とても不満だった経験は一度や二度ではありません。決してライターに実力がないのかという訳ではなく、かと言って僕の進め方や指示の仕方が悪いという訳でもありません(おそらく?)。原因はいろいろとあると思いますが、相性の問題なのです。
媒体の編集者や編集プロダクションのディレクターは、まぁこの人に頼めば、取りあえず取材・原稿は大丈夫・安心という“鉄板ライター”を少なからず抱えています。「このライターはいい」と思った編集者やディレクターは、そのライターばかりに依頼する傾向があり、年間売上げの50%以上が1社からの依頼という準社員並みのフリーライターも少なくないと考えます。弊社の場合、ライターをコーディネートする立場なので、弊社または僕との相性というよりは、クライアント担当者との相性と案件内容をこなせる実力を最も重要視して、ライターを選びます。
媒体の記事の特徴、会社の仕事の進め方によって、多少の合う・合わないは仕方ありませんが、どこの会社からの仕事依頼でもある程度、実力を発揮でき、再びその会社からの仕事依頼が入る、いわゆる敏腕ライターがいます。そんな敏腕ライターは、以下の5つを兼ね備えています(どれか一つでも欠けたらNG)。
- 概ね時間を守る。
- レスポンスが早い。
- どんな仕事に対しても前向きで、ネガティブな言葉は出て来ない。
- 論理的な考え方ができる。ゆえに文章が明快。
- 「クライアントを立てる」という意識が根づいている。
ライターと日常的に仕事をされている方なら、「そう、そう」とうなずいてもらえると思います。まぁライターでなくても、こんな部下や同僚、ビジネスパートナーがいたら心強いものです。