失敗しないライター起用の考え方・やり方

実績があって、手掛けた記事やコピーを確認して「このライターさんならいい仕事をしてくれそう」と思って、面談をしてみると人当たりもよく、とてもしっかりしている印象を持ったので、仕事依頼をしてみたが……。印象とは大きくかけ離れた仕事対応だった。「よくあること」だとまでは言いませんが、決して珍しいことではありません。そのライターの実力不足かも知れませんし、依頼者の期待が大きすぎたのかも知れません。

執筆案件の特徴と（ライターの）依頼者の要望などをヒアリングして、最適なライターを依頼者に手配することを生業としている弊社でさえ、初めて起用するライターが想像通りの仕事をしてくれるかどうかは、正直やってみないと何とも言えないというのが本音です。履歴書や過去に執筆した記事やコピーを熟読し、面談してそのライターさんの人柄や知識量をある程度推し量ることはできますが、それでも実際に仕事をしてもらって見えてくることは多いです。

完成した記事やコピーは、100%ライターメイドではない

実績として見せてもらった記事は、構成が良くまとまりがあって表現も的確で、客観性のある質の高い内容だったが、依頼した取材記事の初稿は期待していたものとは大きくかけ離れ、まとまりがなく表現も稚拙で唖然とした。「（実績として確認した）あの記事は何だったんだ？」と思う、空しい気持ちはよく分かります。

世の中に出ているメディア発信の記事や、企業発信の広告や広報媒体は、ライターの手がけた原稿に何度となくディレクターやクライアント企業から修正を加えられ、ライターの書いた文章の形跡すらないということもあります。ライターの原稿の質とは関係なく大人の事情で修正を加えられたかも知れませんし、単にライターの実力不足かも知れません。このように実績として示された記事やコピーが、ライターの実力を知るのにまったく役に立たないこともあるのです。

また、面談ではとても真面目そうに思えた人が、いざ仕事をしてみるとかなりルーズだと判明することもあります。面談ではみんなよそ行きの顔をするので、実像と異なることもあります。だから人事の専門家がいたり適性検査が行われたりするわけですが、ライターなど外注業者を面談する際は人事担当者が同席したり適正検査をすることはありません。クリエイティブの担当者が実績と面談時の印象だけで判断するのが一般的ではないでしょうか。

テストライティングはライターの自尊心を傷つける

テストライティングを採用しているところもあります。これからライターを目指す人や、新人ライターが対象ならいいと思いますが、ライターとしてある程度キャリアのある人には敬遠されます。たとえ費用を発生させたとしても、テストされること自体に嫌悪感を抱かれ人が集まらないでしょう。

いきなり大きな仕事や、定期的なレギュラーの仕事を依頼せずに、まずは小さな仕事を依頼することをお勧めします。本丸（＝依頼したい仕事）に比べ、仕事の難易度や要求の高さが違うので、判断できないと思われるかも知れません。しかし、その人の仕事との向き合い方を推し量ることはできます。時間やルールを厳守できるか？　全力投球で仕事に向き合ってくれるか？　比較的簡単な取材や執筆であったとしても、その中で高いパフォーマンスを発揮してくれているかは、その気になってそのライターを一所懸命に観察すると、本丸の仕事を依頼すべきかどうかが見えてきます。小さな仕事に全力投球してくれる人は、大きな仕事ならなおさら全力投球してくれます。

一番避けたいライターとは、方向違いの初稿が上がってきて大幅な修正を指示したときに、消極的な態度を取ったり、修正指示の意図をよく理解できなかったりする人です。「そんな素人みたいなライターはいない」と思われるかも知れませんが、案外多いです。実績と実力を兼ね備えていると言われるライターでも実際仕事をした結果、依頼者によっては「あの人、本当にプロのライター？」と抱くこともあります。

ライターの良い悪い、仕事ができるか否かは、依頼者の主観的な考えや思いで決まることが多いです。大した実績がなかったとしても、依頼者にとって仕事がしやすく、指示したことと意図をきっちり汲み取り原稿に反映してくれるライターなら大きな仕事を任せたいと思うものです。そのためには実際に仕事をしてみないとその良し悪しは判断できません。

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